トラウマ必至の児童書『電話がなっている 川島誠』

学校図書館

『だれかを好きになった日に読む本(きょうはこの本読みたいな)』

学校司書になってまだ日が浅い頃、小学校の図書館でこんな本をみつけました。

シリーズもので「ケンカした日に読む本」「うそをついた日に読む本」などがあり、シチュエーションに合わせた子供向きのアンソロジーです。いつも本棚の一番下にあったこのシリーズは、分厚いせいか残念ながらほとんど借りられることがありませんでした。

特に「だれかを好きになった日~」というタイトルがついたこの本は、恥ずかしくて余計手に取りづらかったのかもしれません。そんな時、偶然ネットでこの本が「子供の頃読んでトラウマになった本」との口コミを目にしました。

この可愛らしい表紙からトラウマ…?興味深々で早速読んでみることにしました。

※ここから先は一部ネタバレありです。

あらすじ

中学3年の期末テストの結果によって、全ての人がランクごとに選別され、将来を決められてしまう世界。

主人公と少女は、恋人同士でいつか幸せな家庭を築くことを信じて夢みていた。

少女に初潮が来た。

「早く大人になってしまいたい」と少女は音楽教師と関係を持ってしまう。
その次の日には恋人である主人公とも関係を持つ。

ある日、少女は事故に遭い足を切断することになってしまった。
身体に障がいがある者は高校に進学することが許されない。少女は最下位のランクになってしまう。

一番下のランクになること。

それは人類の為にある重要な役割を担うことを指している。

主人公は恋人と同じランクになろうと、テストを「白紙」で出そうと考えるが、結局実行できずに一人テストに合格してしまう。

合格発表の夜、主人公の家の電話が鳴る。
主人公は、その電話が少女からだとわかっているが…。

リアルな性描写

少女が主人公の前で「張り付いたナプキンを剥がす」シーンがなんとも生々しい。これが児童書なのか…と衝撃を受けました。


「サロンパスのようなナプキン」


というパワーワード。
今の小学生、サロンパスがわかるか疑問ですが、少女が自分の股からバリバリナプキンを剥がすシーンがシュールすぎました。

衝撃の事実

最下層のランクになってしまった人間のたどる結末がなんとも衝撃的なのです。
子供の頃に読んだら色んな意味で忘れられないであろう、まさにトラウマになるような児童書でした。
それでもタイトルは「だれかを好きに」なった時に読む本なのです。
タイトルにだまされて、キュンキュンする事を期待していたら色んな意味で裏切られる一冊だと思います。

おまけ


話は逸れますが、実はこの本にも「電話がなっている」が収録されています。

図書館界隈では有名な、赤木かんこさん編集。こちらもアンソロジーですが、なかなか責めてる本です。タイトルは『地球最後の日』

ちなみに昭和世代の人間なら懐かしい少女漫画家、曽祢まさこさんの作品なども収録されているのですが、個人的に那須正幹さんの「The End Of the World」は大好きな話の一つです。

「The End Of the World」は核に侵された世界で、シェルターの中一人生き残ってしまう少年のお話。ラストで物語の中に流れる「The End Of theWorld」の歌詞が「地球最後の日」の世界観に本当にぴったりで、もの悲しくなります。電子書籍で読むこともできますよ。

コメント

タイトルとURLをコピーしました