新年度の学校司書にとって欠かせない仕事の一つと言えばやはり『図書館オリエンテーション』ではないでしょうか。
どんなに経験値を重ねた司書でも、この時期は年度初めの業務をしながら、頭の片隅では「今年のオリエンテーションはどうしようか」と考えてしまうものです。ましてや新米学校司書は何をしたらいいのか、不安と緊張でドキドキしていることでしょう。
そこで今回は小学校での『図書館オリエンテーション』について書いてみようと思います。
「図書館オリエンテーション」って何をするの?
「オリエンテーション」というと何か堅苦しく感じますが、要は図書館の使い方をレクチャーするのが目的です。
本を探すためには本の場所がわからないと探せません。 本の場所を見つけるには、並び方の仕組みがわからないと探せません。
調べたい読みたい時に、どうすれば本がみつかるのか、本のどこを見れば解るのか、方法を知っていれば答えにスムーズにたどり着けます。 年度初めのオリエンテーションでしっかりやっておくと、授業中だけでなく自分で公共図書館に行って本を探す時にも役に立ちます。
ただ、実際に図書館オリエンテーションについて具体例が載っている本は意外と少なかったりするのですよね。手厚い研修で実践を学べる自治体もあれば、雇用形態によっては練習も事前研修もないまま、ぶっつけ本番でやらざるを得ないこともあるでしょう。(実際に私がそうでした)伝えておきたい基本的な事を軸に、ある程度は自分で工夫して内容を組み立てていく必要があります。
また小学校でのオリエンテーションの場合は特に学年に合った形でのアプローチが求められます。一方的にこちらから長々と説明していても、児童は退屈してしまいます。まずは興味を引き付けつつ、図書館って便利なんだ、なんだか楽しいところなんだ。と思ってもらえるのが第一歩です。
勤務校の利用案内を伝える
では具体的に内容を考えてみましょう。 まず一番大事なのは、その学校の図書室でのルールです。
- 本を大事にする
- 静かにする
- 返却期限
- 貸出冊数
- 開館時間
など。 転校生や転任してきた先生に向ける意味でも、基本的なルールは毎年繰り返し周知しましょう。
学年別に内容を考える
経験上、特に低学年は一度にたくさんの話を盛り込むのは厳しいです。数回に分けて行ったり、学期の始めごとに内容を分けて行うやり方もあります。学年によって、落ち着いて話が聞ける、聞けないなどカラーも様々なので事前に学年の先生と相談しながら内容や時間配分を考えましょう。
1年生
①自己紹介
小学校に入学して初めての対面です。緊張してる子もいるので、とにかく明るく挨拶でいきましょう。意外とこの時の第一印象を覚えている子は多いです。名前はゆっくり、図書館で困った事があったらこの人に聞けばいいんだ、と理解してもらえるよう伝えてます。
②図書室の約束(クイズ形式)
画用紙に図書館に関する問題を書いて、三択や○✕クイズにしました。盛り上がり過ぎると落ち着いて話が聞けなくなってきたりするので、様子を見ながら進めます。
③本の場所
一度では絶対に覚えられないので、実際に本のラベルや別置シールの色を見せながら視覚に訴えましょう。
④読み聞かせ
とにかくみんなで楽しんで笑える本を選んでいました。まずは図書館楽しかったーと思ってもらえるのが目標です。
2年生
①自己紹介
②図書室の約束(クイズ形式)
③本の場所(本の住所の話)
④絵本の読み聞かせ
⑤本の紹介
1年間図書室を使ってきたので、改めてルールの復習です。1年生の時よりも本の並び方を詳しく説明しました。2年国語では図書館の仕組みを探る単元があります。
3年生
①自己紹介
②図書室のルール確認
③本の並び方
④分類番号の話
⑤図鑑・百科事典の使い方(目次・索引)
⑥本の紹介
3年生では図鑑・百科事典を使う単元が増えます。参考図書の使い方を解りやすく伝えられるよう意識してオリエンテーションを組み立てています。実際にポプラディアなどの参考図書を使って目次・索引の使い方を説明したり、分類記号の仕組みについても話します。
4年生
①自己紹介
②図書室のルール確認
③本の並び方
④分類番号の話(日本十進分類法)
⑤本探しゲーム
⑥本の紹介
4年国語では日本十進分類法が出てきます。プリントに印刷したものを渡して、去年より更に詳しく分類について説明します。本探しゲームなどで色んな分類の本に触れてもらいます。
5年生
①自己紹介
②図書室のルール確認
③本の並び方
④分類番号の話
⑤著作権・引用の話
⑥本探しゲーム・グループワーク
⑦本の紹介
高学年では著作権・引用について意識したいところです。グループごとに一つテーマを与えて調べてもらう方法もあります。
6年生
①自己紹介
②図書室のルール確認
③本の並び方
④分類番号の話
⑤著作権・引用の話
⑥グループワーク
⑦本の紹介
かなり図書館の仕組みを理解してきているので、グループワークなど新たな実践をチャレンジしてもらうことが多いです。グループごとにテーマに沿った本を選んでみんなのおすすめ図書館を作ってもらう、という取り組みを行ったこともあります。
プリントは配ったほうがいいの?
低学年では、無いよりはあったほうがという感じでした。凝ったプリント作成に時間をかけてもその場限りですぐ捨てられてしまうこともあるので小学校では良し悪しかなと感じました。
ちなみに図書館利用案は、小さめサイズに印刷して読書カードに挟めて活用してもらっていました。
小道具を用意しよう
分類記号を大きく拡大したものを何枚かラミネートして説明する時に使っています。班ごとに座ってもらい、各分類の本を用意して置いておき、実際に手に取って確認してもらうのもいいでしょう。
また、著者記号を担任の先生の名前にして説明すると盛り上がります。『◯◯先生が詩の本を書いたら911の◯だよ』とか。これでぼーっと聞いていた先生の目が覚めたりします。
「図書館分類の歌」歌ってみる?
学校司書の間で話題の『図書館分類の歌』を知っていますか?

これ、とっても覚えやすくないですか? ただ、今の子供が『アルプス一万尺』知ってるのか微妙ではありますが。
https://www.youtube.com/watch?v=o0tMkm4D5D
中学生以上ならこっちでしょうか。
他にもキラキラ星バージョンなどYouTubeで探すと出てきますので、思いきってみんなで歌ってみるのも面白そうです。(私はまだやったことないですが)
読み聞かせ&本の紹介
オリエンテーションは本の楽しみを伝える時間でもあります。新しいクラスのみんなで大笑い出来る一体感は、子どもの緊張をほぐしてくれる事もあります。自分で読んでいて楽しい絵本を選びたいものです。
オリエンテーションは図書室の存在をアピールできる
長々と書いてしまいましたが、そんな私も何回やってもなかなか満足するオリエンテーションには至ってはいません。ですが懲りずに毎年何かひとつ新しいことを取り入れています。 自分に合ったやり方さえ見つかれば、オリエンテーションを楽しむ余裕が出てくるのかもしれませんね。 何より先生方に図書室をアピールできる絶好の機会です。トライ&エラーで楽しい時間が作れるといいですね。
コメント