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公共・小・中学校図書館を渡り歩くさすらい司書のブログ

あがり症と学校司書

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こんにちは。リーです。

学校司書のみなさんは年度更新の作業も終わり、そろそろオリエンテーションが始まっているころでしょうか。

私は元々あがり症なこともあり、このオリエンテーションの時期は毎回ドキドキしてしまいます。

日々読み聞かせや、本の紹介、授業支援など学校司書の業務をしていて、この仕事はつくづく人前で話す仕事だなと痛感しています。

あがり症になったきっかけ

私があがり症になったきっかけは、小学一年生の頃のある出来事がきっかけでした。

担任の先生がとにかく怖い先生で、大人しい性格だった私は毎日びくびくしながら授業を受けていました。そんなある日、算数の問題で当てられた私は、緊張で頭が真っ白になってしまい声が出なくなってしまったのです。

先生は下を向いている私に強い視線を送りながら黙っているだけ。教室中には気まずい沈黙の時間が流れました。

「わからないなら、わからないとはっきりいいなさい。」

みんなの前で先生に強く言われて、耳まで真っ赤になったのを今でも覚えています。それ以来大勢の前で話すのを極力避けるようになってしまいました。

学校司書の採用面接でのこと

学校司書の面接は二人一組の集団面接でした。

プリントを渡され、読み聞かせを披露したあとに質問の時間になりました。一緒に受けた方は塾でアルバイトをしているという若い方。

読み聞かせは、普段から自分の子供に絵本を読み聞かせしていたので何とかなりました。問題は質問への受け答えでした。 お隣の方は教員免許持ちで、誰が聞いても素晴らしい受け答えで、完全に私は頭が真っ白になりました。

「昨今、子供の読書離れが問題になっていますが、それについてあなたの考えをお聞かせください。」

そう聞かれた私はうまく答えることができませんでした。しどろもどろでなんとかやり過ごしましたが、これは「落ちた」と思いました。

後日。なぜか補欠合格になった私は運よく滑り込み採用になったのですが、今でもあの面接で合格したのが不思議でなりません。

学校勤務が始まって

さて、いざ無事に採用されたものの、出勤日が近づくにつれて違う恐怖が襲ってきました。 何しろ一緒に仕事をするのは学校の先生方なのです。相手はコミュニケーション&会話のプロ。まさにコミュ強の集まりです。

職員集会での自己紹介はなんとか乗り切りました。全校集会での挨拶も心臓がバクバクしながらも話せました。

けれど2週間後には全クラスに対して「図書館オリエンテーション」を行なわなければなりません。

このあがり症で口下手の私が各学年に合わせて内容を考え、一時間子供達の前に立って図書館の使い方をレクチャーするというのです。

毎晩布団の中ではオリエンテーションの流れを考え睡眠不足になってしまいました。

人生初オリエンテーション

いよいよ人生で初めてのオリエンテーションの時間になってしまいました。 先生の仕切りで補佐的に説明すると簡単に打ち合わせしていましたが、開始5分で「では後はよろしくお願いします」と完全にバトンを渡されてしまいました。

教員免許を持たない、ド素人の主婦が先生の前で授業に近いことをするのです。

「自分はななんて分不相応なことをしているのだろう。」と思わず後悔しました。

ですが子供達と先生の目は真っすぐこちらを向いています。やるしかありません。

自己紹介と本の紹介、分類の説明などを必死で説明しました。

顔は赤面。そして汗だくです。終わってみれば結局一時間の半分も使えていませんでしたが、残りの時間は読書に当ててもらい、なんとか無事終えることができました。今思えばなんともグダグダなオリエンテーションでした。

そんな感じで一年目は試行錯誤の連続でした。

毎週低学年のクラスでは読み聞かせもしていましたが、どんなふうに本を読めば子供を引き付けられるのか、悩んでばかりですっかり余裕が無くなっていました。

読み聞かせで気が付いたこと

ある日のこと。

その日の読み聞かせは『ぼちぼちいこか』という何をやってもうまくいかないカバが主役の絵本でした。

ぼちぼちいこか

ぼく、しょうぼうしになれるやろか。なれへんかったわ。

ふなのりは、どうやろか。どうも、こうも、あらへん。

関西弁の口調に子供達がいつもより笑い始めました。 なんだかその顔がかわいくてたまらず、私もだんだん楽しくなってきました。そうすると次第に子供達も話に身を乗り出すようにして反応してきました。

読み聞かせ中は、いつも下を向いてテストの丸付けをしている先生も、珍しくこっちを向いていました。

終わってみればみんな満面の笑み。 初めて読み聞かせが楽しい。と思えた瞬間でした。

私自身が楽しんでいないと子供達も楽しくない、そんなシンプルなことに初めて気がつかされました。

それまではつい肩に力が入って、怖い顔をしていたのだと思います。それからでしょうか、読み聞かせにしろ本の紹介にしろ、何かが吹っ切れたのです。子供の反応を見ながら話す心の余裕が出来てきました。

学校司書もぼちぼちいこか

あれから何年経っても、今日の読み聞かせ、オリエンテーションはいまいちだった!と思う時があります。ですが、そんな日もあるさ、と以前より気にすることが減りました。

今度は少し読み方を変えてみようか、この本が合わなかったら今度はこの本と、前向きに考えるようにしています。まだまだ学校図書館には伝えたい本は沢山あるのです。

こんな風に思えるなんて、昔の自分には考えられませんでした。また、周りに会話のお手本になる先生方が沢山いたおかげだとも思っています。

もし、今の時期緊張している新人学校司書さんがいたら、あの絵本の言葉を伝えたいです。

「ま、ぼちぼちいこか。と、いうことや。」

まとめ

最後に、あがり症の主人公が出てくる漫画を紹介します。

『花もて語れ』です。

花もて語れ 1 (BIG SPIRITS COMICS SPECIAL)

主人公の佐倉ハナは、ムーンリバーコーヒーの新入社員。極度の人見知りで口下手です。

幼少期から人前では小声でしか話すことが出来ないような子供でした。ある時大勢の前で朗読をすることになったハナは、周りが驚くほどの表現力を披露し、聞いている人々をその世界に引き込みます。 数年後、社会人になったハナは仕事がうまくいかず、落ち込んでいました。そんな時、偶然朗読教室に通うことになります。

ハナの姿が自分に重なってしまい、最初は読んでいて胸が痛かったです。 ですが朗読の世界に出会い、自分を表現する方法を得て頼もしくなっていくハナの姿につい引き込まれてしまいました。

「黙読と朗読の違い」「視点の転換」など、物語を語ることを仕事としている自分にも、勉強になる部分が多い内容でした。 一巻では「ブレーメンの音楽隊」、教科書に出てくる宮沢賢治の「やまなし」が出てきますが、こんな解釈の方法があったのかとあらためて原作を読みたくなってしまいます。ぜひ機会があったら読んでみてはどうでしょうか。